NOVEL
一九八四年
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。(著者:ジョージ・オーウェル、 訳: 高橋和久)
一九八四年は、ディストピアを描いた作品。国の最高指導者とされる人物・ビッグブラザーのもと、”テレスクリーン”と呼ばれる監視装置で国民の生活や行動を党がすべて統制した社会を描いている。
”戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり”
これは、党が掲げるスローガンである。このスローガンを標榜に、党は国家政策を推し進めていくが、そこでは自分たちにとって不都合な事実や歴史を改ざんする”真理省”、思考犯罪を犯した者を矯正する”愛情省”、といった行政機関が立ち並ぶ。こうした政策の中でも、ニュースピーク辞書(作中での架空の言語)の規制に力を入れる場面はかなり強烈で、これにより国民の知識や思考の幅を狭め、党のイデオロギーに相反する思想を持たないよう体制を盤石にする場面はとても印象的であった。
一九八四年はロングセラー本ではあるが、ドナルド・トランプが大統領に就任した時に売り上げが急増したり、イギリスでは、イギリス人が読んだふりをしているランキング1位にランク付けされた作品であったりと、何かと話題に事欠かない作品でもある。
興味のある方は、是非一度手にとってみては如何だろうか。