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2023.02.04
TUGUMI
病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と姉妹のように育った海辺の小さな町に帰省した私は、まだ淡い夜の始まりに、つぐみとともにふるさとの最後のひと夏を過ごす少年に出会った――。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。(Amazon内容紹介) ”TSUGUMI”は、主人公・まりあの親友の名前である。彼女は病弱であるにも関わらず、生意気で肝が据わっており、その傍若無人な振る舞いは、家族や主人公、周りの者たちを困らせる。ただ、不思議な事に、そんな言動を取る彼女を読んでいて嫌いになる事はなかった。それは、つぐみの言動が一人の少女の強烈な個性を表すものであり、前を向いて…
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2022.11.06
アルジャーノンに花束を
32歳で幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリイは、ある日、ネズミのアルジャーノンと同じ画期的な脳外科手術を受ければ頭がよくなると告げられる。手術を受けたチャーリイは、超天才に変貌していくが……人生のさまざまな問題と喜怒哀楽を繊細に描き、全世界が涙した現代の聖書。(Amazon内容紹介) 本書は1959年に発表され、映画・ドラマ化もされた書籍である。生まれながらにして障害を抱えていたチャーリイは32歳で世界初の脳外科手術を受け、そこから数ヶ月でIQ68からIQ185の天才へと変貌する。しかし、その過程で過去の自分が両親や周りからいじめられていた経験を思い出し、さらに感情のコントロールが急激な知…
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2020.07.30
ペスト
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。(著者:アルベール・カミュ, 訳:宮崎嶺雄) 「新型コロナウイルス」の世界的流行が始まってから、アルベール・カミュの著書『ペスト』に注目が集まっている。この物語は、アルジェリアのオランという町で未知のウイルス「ペスト」が発生し、その時の様…
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2020.04.18
斜陽
敗戦後、元華族の母と離婚した“私”は財産を失い、伊豆の別荘へ行った。最後の貴婦人である母と、復員してきた麻薬中毒の弟・直治、無頼の作家上原、そして新しい恋に生きようとする29歳の私は、没落の途を、滅びるものなら、華麗に滅びたいと進んでいく。(著者:太宰治) 「斜陽」は、没落していく貴族の生活を描いた作品だが、その様相は暗さの中に耽美的な美しさを感じさせるストーリーである。その象徴的な場面が、主人公・かず子を通して描かれるお母様の姿だろう。まず、作品の冒頭では、お母様がスウプを飲む姿を描いているが、その姿が何とも上品で美しく、それ以降も、放蕩息子・直治を思いやる姿、娘・かず子を慈しむ描写は印象的…
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2020.04.09
アルケミスト
半飼いの少年サンチャゴは、その夜もまた同じ夢を見た。一週間前にも見た、ピラミッドに宝物が隠されているという夢。少年は夢を信じ、飼っていた羊たちを売り、ひとりエジプトに向かって旅にでる。アンダルシアの平原を出て、砂漠を越え、不思議な老人や錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れをとおし、少年は人生の知恵を学んでいく。(著者:パウロ・コエーリョ) 全世界で81カ国語に翻訳され、8500万部の売り上げを誇っているアルケミスト。その内容は、宝物の夢を見た少年が、その夢を追いかけ旅に出るという物語だ。話の中では「前兆」「心の声」「大いなる魂」といったスピリチュアルめいた言葉が数多く登場するが、それは、…
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2020.04.04
正義の教室
ソクラテス、プラトン、ベンサム、キルケゴール、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc。人類誕生から続く「正義」を巡る論争の決着とは?私立高校の生徒会を舞台に、異なる「正義」を持つ3人の女子高生のかけ合いから、「正義」の正体があぶり出される。(著者:飲茶) 本書は、生徒会長である今中正義を中心に、功利主義者である最上千幸、自由主義者であるリバティ・ミユウ・フリーダム、直観主義者の徳川倫理、そして倫理の授業を行う風祭先生を巻き込んで「正義とは何か?」について考えていく。哲学自体をテーマにした小説は珍しいが、話の中でも登場人物の過去に触れた様々な伏線が散りばめられているので、読んでいる者を飽きさせな…
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2020.03.01
天地明察
徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。(著者:冲方丁) 時は17世紀、当時日本で使われていた暦・宣明暦が正確性を失い初め、幕府は国家の威信にかけて新たな暦を作り出す必要に迫られていた。その担当者として選ばれたのが、本作の主人公・渋川春…
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2020.02.22
火花
売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌でまた人間味が豊かな人物。「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、2人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわる2人はさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがて2人の歩む道は異なっていく。徳永は少しずつ売れていき、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。お笑いの世界の周辺で生きる女性たちや、芸人の世界の厳しさも描きながら、驚くべきストーリー展開を見せる。笑いとは何か、人間の本質とは何かを描ききり第153回芥…
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2020.02.13
火星に住むつもりかい?
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!(著者:伊坂幸太郎) 舞台は日本。平和警察が国家権力を手中に収め、彼らに抗おうとするものなら、即座に刑務所へ連れて行かれ公開処刑に処せられる。しかし、そうした状況の中、ある一人の人物が立ち上がり、謎の武器を使って平和警察を混乱させてゆく。 …
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2020.02.07
家族八景
幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。(著者:筒井康隆) 小説の主人公・七瀬は生まれつき備わった能力・テレパシーを備え、家政婦として働いている。そんな七瀬が訪れる訪問先は、表面上は穏やかでも、心の内面ではお互いをいがみ合い、嫉妬や欲望、醜悪さが入り乱れた家庭が多く、人間の浅ましくも醜い心理的状…