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ビジネス教養としての半導体(著者:高乗 正行)

本書では、国内外で30万人以上に利用されている電子部品、半導体の通販サイト運営を行う著者が、半導体とはそもそも何か、世の中に欠かせないものになるまでの進化の歴史、半導体を巡る世界の動きなどを解説します。時事問題を語る場やビジネスシーンなどで知らないと恥をかく大人の教養としての「半導体」の知識が身につく一冊です。(Amazon内容紹介)

近年、半導体不足が世界的な課題となり、自動車からスマートフォン、家電まで、幅広い産業に影響を与えている。こうした中、ビジネス教養としての半導体について詳しく解説した著書が本書である。

本書ではまず、半導体の定義と概要について詳述している。半導体は電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間的な性質を持つ物質で、ゲルマニウムやシリコンなどが該当する。ただし、ビジネスの文脈では、シリコンなどを用いて作られるトランジスタや集積回路(IC)、LED、センサなども含む「半導体」と広義に定義されている。そして、半導体の製造には、「垂直統合型」、「水平分業型」という2つの主要なビジネスモデルが存在する。垂直統合型は、設計から製造、販売まで自社ですべてを行う企業で、これを垂直統合型デバイスメーカー/IDM(Integrated Device Manufacturer)と呼びれる。一方、水平分業型は、設計、製造の各工程を異なる会社が担当し、設計専門の会社を「ファブレス企業(NVIDIA、AMD、Qualcommなど)」、前工程を担う製造専門の企業を「ファウンドリ企業(TSMC、UMC、Samsungなど)」、後工程を担う会社を「OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)(ASE、Amkor、JCETなど)」と呼ばれる。最近では、インターネットの発展により設計図を瞬時に送信でき、製造地が設計地と異なる国でも問題ないため、水平分業型のモデルが主流となっている。

日本の半導体業界の現状と将来の展望について目を向けてみると、日本には競争力の高いファウンドリ企業やファブレス企業はまだ存在していない。しかし、半導体材料や製造装置の製造においては高いシェアを誇っている。例えば、シリコンウェハーやフォトマスク、フォトレジスト、半導体製造装置などは、日本企業が世界的なシェアを占めてる。今後日本が世界の半導体業界で戦うためには、半導体の設計力強化と電子機器を使った新しいサービスの創造が必要と述べられている。

半導体の基本からビジネスモデル、日本の半導体産業の現状と未来について深く掘り下げており、半導体業界に興味のある方にとっては有益な一冊になるだろう。

ビジネス教養としての半導体