BUSINESS
SIMPLE RULES
世界の名門ビジネススクール、ハーバード、スタンフォード、MIT、LBS…が教える、あらゆるムダと時間を削ぎ落とし、成果を最大化Maximizeする方法。山積みの課題、複雑なプロジェクト、利益の対立…すべては、とことん「単純」に解決する。(著者:ドナルド サル, キャスリーン アイゼンハート, 翻訳:戸塚 隆将 )
深く考えすぎていて答えが出ない時、スッと思考の回路を緩めてあげた瞬間に「どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだ」という経験をした事がある。こうした体験は、何も私だけに限った事ではないだろう。本書のシンプル・ルールは、あらゆる状況を考慮に入れ複雑化した物事を、一度単純化してみる事によって、従来のパフォーマンスを飛躍的に高める手法が述べられている。
ここではいくつかそのシンプルルールを紹介してみたい。
ミシガン大学教授のレスリー・パーロウ氏が、レーザープリンタの開発チームを対象に研究を行なっていた時 当時そのチームは新型レーザープリンタの開発にとりかかっていた。ところが、四年の予定だった開発期間が突然大幅に短縮され、九ヶ月となってしまった。エンジニアたちは共同作業もするが、単独作業にも多くの時間を割く。スケジュール変更後、彼らは休日返上で仕事をしていたが、しだいにストレスがたまり、モチベーションもみるみる低下していった。中には自分ひとりでする仕事を優先する者も出てきて、開発チームの仕事は崩壊寸前の状態にまでおちいっていった。 そこでパーロウ教授は、開発チームにルールをつくってみたらどうかと提案し、チームワークをとりつつも、個人の作業にも時間をあてられる、一挙両得のルールを作りあげてみた。
1 火曜、木曜、金曜の午前中は単独作業を行なう
2 ほかの時間は共同作業を行なう
このルールを実行してから、エンジニアたちの作業能率はみるみるうちに上がり、厳しいスケジュールにもかかわらず、新型レーザープリンタを予定どおりに発売できたのである。 これは、パーロウ教授がこれまで悪循環に嵌りこんだ企業を数多く見てきた経験によって導き出したシンプルルールであり、そこには複雑なルールなど一切ない。
また、今や世界最大手の動画配信会社としてグローバルな事業展開を続けている”ネットフリックス”の社内規則を見てみると、その規則は驚く程シンプルだ。
人事ポリシー
・社内に悪い影響を及ぼす人を雇わないように注力する
・採用ミスに気づいたら、速やかに解雇する
経費、接待費、贈答費、出張費に関する規則
・会社にとって最善の利益を考えた行動をする
こうしたわずかしかないルールをみると、今ひとつ頼りないと思う人がいるかもしれないが、ネットフリックスの人事担当者はこうした考えに対しこのような文言を放っている。
「97%の社員は、信頼に値する人物だ。残り3%の社員の問題に対処するために、膨大な時間をかけて就業規則を作成している企業は驚くほど多い」と。
本書では、こうしたシンプルルール以外にも、コーディングルール・タイミングルール・ハウツールールなど、幾多の役に立つルールを取り上げている。さらに、こうしたルールは人間社会からの知恵のみを拝借しているのではなく、時には自然界からそのアイデアを得ているので非常に面白い。シンプルルールの魔力について詳しく知りたい方にとてもおすすめです。