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最高の体調
日々の不調や不満には様々なレベルがあります。たんに朝起きれないという人もいれば、仕事の集中力が続かなくて作業が進まない。さらには怒りや不安がコントロールできずに人生が上手くいかない人、つねに体調不良に襲われている人、毎日の暮らしに張り合いがなく空虚な気持ちのまま暮らしている人など、症状や問題の深刻さには個人差があるはずです。まずは現代人が抱える問題の「共通項」をあぶりだし、すべてを柔軟に解決する汎用的なフレームワークを提供します。(著者:鈴木裕)
年に5,000本の科学論文を読み続けている著者・鈴木裕さんが執筆した最新図書「最高の体調」。
著者は、現代人が体調不良に悩まされる大きな原因として「文明病」を挙げているが、文明病とは、近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状であると定義している。例えば、肥満・鬱病・睡眠の不調といったものはその典型例だろう。しかし、よくよく考えてみれば、文明が発達し、現代人の環境が昔に比べて大きく向上したにも関わらず、体調不良が引き起こされているのはおかしな現象である。これについて著者は、進化医学という進化論をベースとした考え方で、この文明病の正体を明らかにしようとしている。
元来、人は数百万年もの間、自然の中で獲物を追い、太陽の運行とともに暮らしの中で最高のパフォーマンスを発揮するように進化し続けてきたが、今から1-2万年前に、石器時代から農耕生活に移り変わるというライフシフトが起きた。これは、人類が約600万年に渡って狩猟採集生活を続けてきた壮大なタイムスパンからしてみれば大きな事件であり、たかだか1-2万年の農耕生活によって定住生活への人類の基礎が再度構築されなおしているとは考え難いだろう。
そんな考え方が根本にもあり、筆者はパレオダイエット(旧石器時代の食事法)という進化医学のアイデアを使ってライフスタイルを組み替えていくテクニックや文明病の正体を本書で紹介しているが、その内容はどれも最新医学のデータに基づいた実証例を踏まえて解説しているので非常に面白い。
例えば、
・2015年に中国のPLA病院が行なったメタ分析で、180万人分のデータを精査した所、食物繊維の摂取量が多い人は、少ない人に比べて早期死亡率が23%減少し、癌の発症率は17%ほど低下、さらに炎症性の病気については43%リスクが下がったことが判明
・オランダで行われた実験で、研究チーム22 – 67才の男女55人を夏のピレネー山脈に送り届け、10日間続けて夏のピレネー山脈でアウトドア生活を送ってもらった所、身体検査で体重が平均5%減り、インスリン(血糖を下げる働きのあるホルモン)抵抗性は55%改善、善玉と悪玉のコレステロール比率も19.3%改善
・2014年、進化心理学者のロビン・ダンバー博士が、学生たちの協力を得て全員の電話の通話記録を入手し、人間関係の変化を調査したでは、ヒトの認知リソースは大勢の友人を捌くように出来ていないため、1回につき5人前後としか親密な人間関係が築けないことが判明/p>
また、文明病の正体に関しては、
・2013年にインド国立生命科学研究センターが行なった研究で、常に何らかの不安を感じている人は、脳の海馬(新しい記憶や学習能力などに関わる器官)が小さくなる現象が生じていることへの発見
・2015年ブリガムヤング大学が「孤独」に関して行なったメタ分析により、孤独感はタバコや肥満と同じぐらい全身に炎症を起こして早死にのリスクを高めることがわかり、具体的には、孤独感が強い人は早期死亡率が26%も高まり、社会からの孤立が長引けば、その数字は32%にまでアップ
・2017年にテキサス大学が行なった「認知機能」に関する実験では、デジタルデバイスが近くにあるだけで、認知機能は大きく低下し、デバイスの存在を近くに感じた時点で、目の前の作業に使える認知のリソースが減少
こうした科学的エビデンスを紹介しながら、最高の体調を手に入れるための方法が紹介されているが、個人的には、この一冊で健康とパフォーマンスに関わる大まかな全ての内容が網羅されてる気がします。最高の体調を手に入れたい方は、是非手にとってみてはいかがだろうか?