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フェルマーの最終定理

言葉にしようのない、美しい瞬間でした。17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが――。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!(著者:サイモン シン 翻訳:青木 薫)

    フェルマーの最終定理という名前、読者の方も一度はどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか?この問題は17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーによって残された問題だが、その問いは以下のようなものである。

    3以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない。これを証明せよ。

    極めてシンプルかつ明快で、問題の意味を理解するだけなら、恐らく小学生でもわかるだろう。

 だが、約3世紀半もの間、数々の数学者がこの定理に挑み続けたものの、誰1人として証明することはできなかった。本書は、そんな数学界最大の難問とされる「フェルマーの最終定理」に自らの生涯を賭け挑んだ一人の男(アンドリュー・ワイルズ)に焦点を当てて描かれた作品であるが、その証明に至るまでのプロセスは、理系文系問わず非常に分かりやすく説明されており、ワイルズの苦悩・挫折・喜びといった感情も、まるで自身がフェルマーの最終定理に挑戦しているかの様な臨場感を醸し出している。

    また、著書ではこの定理を証明するにあたり、多大な功績を残した数学者(解析学の権化・オイラー、男性のふりをしてまで学校に通った女性・ソフィー・ジェルマン、2年かかるとされる数学教材をたった2日で読破してしまった天才・ガロアなど)のエピソードを取り上げているが、こうした歴代の数学者たちの数学に対する想いや情熱が、フェルマー予想に集約されているからこそ、この本をさらに面白いと感じるのだろう。

    数学という科目に興味を持てない方、数学者の人生を垣間見てみたい方に是非オススメしたい図書です。