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教室内(スクール)カースト

スクールカーストとは、主に中学・高校のクラス内で発生するヒエラルキーのことで、小学校からその萌芽はみられる。同学年の子どもたちが、集団の中で、お互いがお互いを値踏みし、ランク付けしていることは以前から指摘されており、いじめや不登校の原因となるとも言われてきた。本書では、これまでのいじめ研究を参照しながら、新たに学生や教師へのインタビュー調査を実施。教室の実態や生徒・教師の本音を生々しく聞き出している。生徒には「権力」の構造として映るランク付けが、教師にとっては別の様相に見えていることも明らかに…。本書ではまた、中学生への大規模アンケート調査結果もふまえながら、今後の日本の学校教育のあり方に示唆を与える。(著者:鈴木 翔)

    本書は、スクールカーストというクラス内で発生するヒエラルキーの原因を、各ステータスにランク付けされた生徒が会話形式でその理由を話していくが、その内容はあまりにも生々しい。そもそも、スクールカーストの問題点は、クラスメイトから身分の低い存在とみなされた者は、いじめの標的になりやすく、たとえいじめに合わなかったとしても、自分に自信をなくし、学校生活への適応に大きな影響を及ぼすことだと著書で言及しているが、教師へのインタビューを通し、スクールカーストは必ずしも否定することではないといった意見があることについても紹介している。

    これは、スクールカーストという「地位の差」を「生きる力」として捉えれば、肯定せざるを得ない一面もあるという考えで、生徒の間の立場の強弱が「人に意見を聞き入れてもらえたり、人に支持を得られ」たりする「能力」は、学校が社会の架け橋として存在している以上、学校で身につけておかなければならない必要不可欠なものとする意見である。
    また、「立場の弱い」生徒に関しては、「スクールカースト」の中でなぜ自分が下位だと見なされていたのかということを考えることによって、自分がなぜ立場が「弱い」のかに「気づ」き、そうした弱い自分を修正して、社会に巣立つことができるようになればいいのではないか、という考え方もあるそうだ。

    しかし、2018年現在、昔のような閉鎖的時代から、PC一台あれば、どこでも仕事ができる流動的時代に移り変わっているので、その意味だと、無理して学校に通って自分のスクールカーストとしての地位を知る必要がないのかな、と感じた。

    スクールカーストという学校内の人間関係の仕組みを知りたい方にお薦めです。