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日本再興戦略

AI、ブロックチェーンなどテクノロジーの進化、少子高齢化、人口減少などにより、世界と日本が大きく変わりつつある。今後、世界の中で日本が再興するにはどんな戦略が必要なのか。テクノロジー、政治、経済、外交、教育、リーダーなどの切り口から日本と日本人のグランドデザインを描く。(著者:落合陽一)

    今、日本で最も注目されているだろう若きメディアアーティスト兼実業家(肩書きが多すぎてよくわからん)の落合陽一氏が今後の日本の行く末を四方八方から切り込んだ内容が本書になる。テレビで落合氏をみると、一風変わった人に見えてしまうが、本書の中身はそのギャップに驚かされるぐらい分かりやすく洗練されている。    著者は、日本をアップデートする手段として、地方自治体によるICOの可能性・MBAよりもアート・機械化自衛軍、といった独自の視点から見たテーマを掲げ論じているが、それ以外にも、日本とは何か・欧米とは何か・政治、教育など、視点をマクロにまで広げ独自の見解を述べている。

    また、本書で著者は、自身のフィールドである未来のテクノロジー分野についても触れているが、中でも2020年に世界の先駆けとして東京で始まる次世代通信システムの5G(第5世代移動通信システム)の可能性について書かれた箇所はなかなかに面白い。
    著者が言うには、5Gになると、たった1ミリ秒の遅れで情報通信できるようになり、これは人間の入出力感覚で遅れを体感しないレベルだそうだ。それにより、今までは遅延があると危険で不快に感じていた領域(自動運転・コミュニケーション・医療ロボットなど)でもテクノロジーを活用できるようになり、自動運転を利用した田舎から都心への通勤・3次元中継・触覚伝達による遠隔介護が実現できる可能性について述べている。

    その他にも、テクノロジーに限らず多彩な叙述で論を展開しているが、最後にこのようなメッセージを読者に残している。

    「ポジションを取れ。批評家になるな。フェアに向き合え。手を動かせ。金を稼げ。画一的な基準を持つな。複雑なものや時間をかけないと成し得ないことに自分なりの価値を見出して愛でろ。あらゆることにトキメキながら、あらゆるものに絶望して期待せずに生きろ。明日と明後日で考える基準を変え続けろ」

    日進月歩変貌する時代の中、日本という国の描き方を知りたい方にお薦めです。