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里山資本主義
「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている! 原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たし、安全保障と地域経済の自立をもたらす究極のバックアップシステムを、日本経済の新しい原理として示す!!
(著者:藻谷 浩介、NHK広島取材班)
里山にはいまでも人間が生きていくのに必要な大切な資本がある。著者は、こうしたお金に換算できない里山の資源をいかしていくことを、「里山資本主義」と名付けている。これは何も原始時代に遡れと言ってるわけでは決してない。例えば、山あいの自然豊かな農村でちょっと散歩をすれば、薪の4、5本拾うのはそれほど難しいことではない。過疎地と呼ばれる島に住む人は、天気の良い日にちょっと釣り糸を垂れれば、その日の夕食を飾るアジの一匹くらい釣れるかもしれない。
里山からの恵みをサブシステムとして利用するしなやかな経済は、リーマンショック・東日本大震災といった自分の手の届かない範囲にある大きなシステムや災害に巻き込まれた時のリスクが一気に顕在化した今だからこそ、注目すべきモデルといって良いだろう。
本書では、そんな大きなシステムに頼らず、里山という資本を使い悠々自適な生活を送れるよう取り組む国や市町村を紹介しているが、ここではその事例として、岡山県真庭市と広島県庄原市の取り組みを挙げてみたい。
真庭市の建材メーカーは、工場で出る木くずで自家発電を始めたところ、年間1億の電気代がゼロとなり、余った電気を売電して毎月400万円も定期収入が入るようになった。それまで産業廃棄物としてお金を払って引き取ってもらっていた木くずがお金に変わり、さらに木くずから燃料ペレットも作って、それが地域の小学校や農家のハウス栽培に使われるようにもなった。
庄原市は、裏山に雑然と散らばる木の枝に目をつけ、エコストーブを取り入れた。エコストーブは単なる暖房器具ではなく、煮炊きなどの調理に使われる。木の枝が4〜5本あれば、夫婦二人の一日分のご飯が20分で炊けてしまう。作り方もいたってシンプルで、ペール缶、ステンレスの煙突や断熱材となる土壌改良材木をホームセンターで購入し、約1時間もあれば完成する。山を燃料源にすれば、無尽蔵に燃料を得る事ができ、山の木も定期的に伐採した方が環境は良くなっていく。
里山を資本とした取り組みと挑戦は真庭市や庄原市以外にも数多く取り上げているが、それ以外にも著者の幅広い見識を生かし、経済再生・少子高齢化・社会福祉にも里山資本での知識を結びつけ解決策を提示している。
マッチョな経済からしなやかな経済への移り変わりに興味のある方は是非読んでみてはどうだろうか。