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2020.02.13
火星に住むつもりかい?
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!(著者:伊坂幸太郎) 舞台は日本。平和警察が国家権力を手中に収め、彼らに抗おうとするものなら、即座に刑務所へ連れて行かれ公開処刑に処せられる。しかし、そうした状況の中、ある一人の人物が立ち上がり、謎の武器を使って平和警察を混乱させてゆく。 …
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2020.02.07
家族八景
幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。(著者:筒井康隆) 小説の主人公・七瀬は生まれつき備わった能力・テレパシーを備え、家政婦として働いている。そんな七瀬が訪れる訪問先は、表面上は穏やかでも、心の内面ではお互いをいがみ合い、嫉妬や欲望、醜悪さが入り乱れた家庭が多く、人間の浅ましくも醜い心理的状…
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2020.01.29
君たちはどう生きるか
この本の主人公である本田潤一君は、15歳の中学生で、周りからは「コペル君」という名の愛称で親しまれる(ちなみに、コペル君とは、彼の叔父さんが地動説を唱えた偉人”コペルニクス”に因んで付けた名前だ)。そんなコペル君は、成績優秀でスポーツも卒なくこなし、浦川君や北見君といった思いやりある友人と一緒に楽しい学生生活を送っていく。だが、ある事件をきっかけに、コペル君は彼ら友人との間に亀裂を生じさせてしまい、塞ぎ込んでしまう。そんな時、コペル君を見かねた叔父さんは、彼にある助言を送り、自身の犯した過ちに向き合かう決心をする事になる。本書は、そんなコペル君の人生を通し、人としてあるべき姿を学んでいく道徳…
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2020.01.23
私たちは子どもに何ができるのか
非認知能力は、読み書き計算のように教えて身につくものではない。「環境」の産物なのだ。「やり抜く力」「好奇心」「自制心」…人生の成功を左右する力の育み方を、最新の科学的根拠(エビデンス)と先進事例から解き明かす!(著者:著者:ポール・タフ, 訳:高山 真由美) 近年、教育分野の世界で「非認知能力」が注目されている。非認知能力とは、読み書きや学力のようなIQで測れる能力に対し、やり抜く力・好奇心・自制心のような数字で測る事のできない能力のことを指す。 そして、今や非認知能力は、人生の成功を左右する力として、IQ以上に大きな影響力を及ぼす事が最新の研究で明らかとなっている。 では、実際に子供の非…
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2020.01.16
「学力」の経済学
「データ」に基づき教育を経済学的な手法で分析する教育経済学は、「成功する教育・子育て」についてさまざまな貴重な知見を積み上げてきた。そしてその知見は、「教育評論家」や「子育てに成功した親」が個人の経験から述べる主観的な意見よりも、よっぽど価値がある―むしろ、「知っておかないともったいないこと」ですらあるだろう。本書は、「ゲームが子どもに与える影響」から「少人数学級の効果」まで、今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果を、科学的根拠から解き明かした画期的な一冊である。(著者:中室牧子) 子供の学力を伸ばす為、様々な教育方法がある。そのいくつかとして「子供にゲームをさせない」「子供はほめて育て…
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2020.01.12
スクールカースト
スクールカーストとは、主に中学・高校のクラス内で発生するヒエラルキーのこと。同学年の子どもたちが集団の中で、お互いを値踏みしランク付けしていることは以前から指摘されており、いじめや不登校の原因となるとも言われてきた。本書では、これまでのいじめ研究を参照しながら、新たに学生や教師へのインタビュー調査を実施。その本音を生々しく聞き出している。また大規模アンケート調査もふまえ序列が維持される背景に迫る。(著者:鈴木翔, 本田 由紀) いつの時代でも、生徒間のいじめ問題が絶える事はない。しかしそれは一体なぜなのだろうか。本書は、そんないじめ問題が発生する大きな理由の一つとして、スクールカーストを挙…
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2020.01.03
舟を編む
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!(著者:三浦しをん) 電子辞書が巷に溢れる今日この頃、紙の辞書を使う人は昔に比べ、めっきり減ってしまったと思う。「舟を編む」という小説は、そんな巷に溢れる電子辞書作り…ではなく、紙の辞書作りに情熱を傾けた者たちのストーリーだ。 本書を読む前、私は「辞書を作るって、…
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2019.12.19
里海資本論
里海=人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム。瀬戸内海の再生で世界から注目されている。地球の限界を救うモデルとして、瀬戸内海生まれ日本発の概念が、世界経済を今まさに変えようとしている!(著者:井上 恭介, NHK「里海」取材班) 突然だが、「里海」という言葉を聞いた事があるだろうか。里海とは、”人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸海域”という意味であり、この用語は既に学術用語として確立されている。そして、そんな”里海”にある資源を数ある有用な資源として活用していく為の考え方が”里海資本”と呼ばれるものだ。 里海資本では、自然と対話し、適切に手を加えて、…
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2019.12.12
羊と鋼の森
高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。(著者:宮下奈都) 本作は、調律という仕事に見せられた主人公・外村が、調律師という仕事を通じて成長して行く物語。所感としては、「音」という言語化が難しいジャンルを、ここまで繊細で静謐な筆致で、しかも何とも独特な表現と比喩を交え描かれている為か、その感覚的な世界観が体に染み込んでいくような感じがする。また、頼れる兄貴分の…
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2019.12.04
お金2.0
「資本主義」を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か。2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。その典型がビットコインです。あまりにも既存社会の常識とは違うので「今の経済」のメインストリームにいる人たちにとっては懐疑や不安の対象になりやすいといった特徴もあります。そして、それこそが全く新しいパラダイムであることの証でもあります。本書ではまずお金や経済の仕組みから、テクノロジーの進化によって生まれた「新しい経済」のカタチ、最後に私たちの生活がいかに変わるか、の順番に解体していきます。(著者:佐藤航陽) 仮想通貨・フィンテッ…