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2020.01.29
君たちはどう生きるか
この本の主人公である本田潤一君は、15歳の中学生で、周りからは「コペル君」という名の愛称で親しまれる(ちなみに、コペル君とは、彼の叔父さんが地動説を唱えた偉人”コペルニクス”に因んで付けた名前だ)。そんなコペル君は、成績優秀でスポーツも卒なくこなし、浦川君や北見君といった思いやりある友人と一緒に楽しい学生生活を送っていく。だが、ある事件をきっかけに、コペル君は彼ら友人との間に亀裂を生じさせてしまい、塞ぎ込んでしまう。そんな時、コペル君を見かねた叔父さんは、彼にある助言を送り、自身の犯した過ちに向き合かう決心をする事になる。本書は、そんなコペル君の人生を通し、人としてあるべき姿を学んでいく道徳…
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2020.01.03
舟を編む
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!(著者:三浦しをん) 電子辞書が巷に溢れる今日この頃、紙の辞書を使う人は昔に比べ、めっきり減ってしまったと思う。「舟を編む」という小説は、そんな巷に溢れる電子辞書作り…ではなく、紙の辞書作りに情熱を傾けた者たちのストーリーだ。 本書を読む前、私は「辞書を作るって、…
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2019.12.12
羊と鋼の森
高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。(著者:宮下奈都) 本作は、調律という仕事に見せられた主人公・外村が、調律師という仕事を通じて成長して行く物語。所感としては、「音」という言語化が難しいジャンルを、ここまで繊細で静謐な筆致で、しかも何とも独特な表現と比喩を交え描かれている為か、その感覚的な世界観が体に染み込んでいくような感じがする。また、頼れる兄貴分の…
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2019.11.27
Never Let Me Go
This story is about Clone human who is to end their life as provider. The author of this story, Kazuo Ishiguro received the Novel prize in Literature in 2017. The most famous novel of his should be “The Remains of the Day” for which he received “Booker Prize”. However, I would like to introduce “Never Let Me Go” this time as my another favorite story written by him. The story begins with the school life in Dormitory system called Hailsham, where the heroine, Kathy and her friends, Ruth and Tommy, spend a casual time. Towards the end of the story, they gradually awake to themselves and finally they strongly think “WANT TO LIVE (as I hope)”. T…
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2019.11.12
旅のラゴス
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。(著者:筒井康隆) ”旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ” ”世界を知りたい”という好奇心のままに旅を続けるラゴス。彼が行く世界は、超能力を使う人々、ワインの海、集団転移や壁抜け体験など摩訶不思議な光景が広がっている。そんな世界を旅す…
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2019.10.24
わたしを離さないで
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。(著者:カズオ・イシグロ) 本作は、臓器提供をする為にクローン人間として生まれ、その生涯を終える者たちの物語。この本の著者であるカズオ・イシグロ氏と言えば、2017年にノーベル文学賞を受賞し、さらに”日の名残り”でブッカー賞を…
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2019.10.02
マチネの終わりに
天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。(著者:平野 啓一郎) 「『マチネの終わりに』という小説はどんな作品か?」と言われたら、おそらく私は「大人の恋愛を描いた小説」と答えるだろう。しかし、一概にこの小説をただの恋愛小説と表現する事はできないと感じる…
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2019.09.25
一九八四年
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。(著者:ジョージ・オーウェル、 訳: 高橋和久) 一九八四年は、ディストピアを描いた作品。国の最高指導者とされる人物・ビッグブラザーのもと、”テレスクリーン”と呼ばれる監視装置で国民の生活や行動を党がすべて統制した社会を描いている。 ”戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力…
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2019.09.10
ドグラ・マグラ
精神医学の未開の領域に挑んで、久作一流のドグマをほしいままに駆使しながら、遺伝と夢中遊行病、唯物化学と精神科学の対峙、ライバル学者の闘争、千年前の伝承など、あまりにもりだくさんの趣向で、かえって読者を五里霧中に導いてしまう。それがこの大作の奇妙な魅力であって、千人が読めば千人ほどの感興が湧くにちがいない。探偵小説の枠を無視した空前絶後の奇想小説。(著者:夢野 久作 ) ドグラ・マグラは、日本3大奇書(『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』)の一つに数えられ、「読めば精神に異常を来たす」と言われる作品である。確かに読んでみると、その内容は奇書と呼ばれるほど不可解かつ凄みがあり、「…
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2019.08.03
陽気なギャングシリーズ
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!(著者:伊坂孝太郎) 陽気なギャングシリーズは伊坂孝太郎の人気シリーズで、現在3部作まである。話としては、個性の強い四人組(成瀬・響野・久遠・雪子)が、完全犯罪なる銀行強盗を目指していく物語である。しかし、偏に完全犯罪といってもそう簡単に成功するものではない。そこで…